2012年05月23日

【書評】私の財産告白[本多静六]



※ブログを訪問された方は、ぜひ投票を忘れずにお願いします!

※※本書は、投票欄では『人生と財産』となっています。『人生と財産』は本書と他の本多氏の著作数冊をまとめたもので、現在廃刊となっており、中古は高額なものになっています。他の書と切り離した本書は新刊として出されており、お求め安くなっています。


本多静六氏については、知っている人にとっては、「ああ!やっぱり日本書候補になっているのか」と思うだろうが、知らない人はまったく名前すら聞いたことがないことだろう。名前を聞いただけで誰でもなにかしらのイメージを持てる渋沢栄一氏や二宮尊徳翁と違って、まず本多氏がどんな人物なのかを簡単に書く必要がある。



本多氏は本書の冒頭にも出ている自筆プロフィールによると慶応二年(1866年)に埼玉県で生まれ、苦学をした末、ドイツ留学を果たし国際経済学博士号を取得し、日本では東京農科大学で教鞭をとった主に山林学の専門家・・・という経歴になっている。

ここで経歴の紹介を止めると、なるほど、教育者として立派な業績を残されたんだな、若い人を指導する本か何かかな?と思うかも知れない(ここで本多氏の著書を知っている人はにやっとするかもしれない)。

もちろん彼は教育者として立派な人物として知られているのだが、実は彼は、個人としては類まれなる膨大な財産を一代で築いたことで知られている。それも本業の教職の徹底と本業で得た貯金を元に継続的に投資したことによりその莫大な財を築いたのだ。彼は、その後、思うところあって、退官の年に全ての財産を匿名で寄付し、その後簡素な生活を続け370冊もの著作を残した。

通常、一代で財を成した、などと聞くと、うまく立ち回ったな、あいつは!とか、何か悪いことをして稼いだ怪しい金なのではないのか?などと周りの人間が考える。

これは日本国民固有の忌むべき心理である。この10年程度を思い出しても、多くのベンチャー企業の経営者が叩かれ、ひがまれ消えていった。今ひがむ対象がビジネス界にすっかりいなくなり、公務員の給料が不当に高いと叩かれている。

これは、本多氏の推察に寄れば、正しい人間は金を持っていないはずという、奇妙な儒教的清廉の思想が日本には蔓延していて、それがひがみや無用な争いを生み出し、ひいては個人の成功を邪魔しているということである。

彼自身も、蓄財が進んだ頃、職場で寄付を求められ、つい多額の寄付をしすぎて同僚に何か悪事をなしているに違いないと疑われ退職まで迫れたことがある。

このようなひがみ根性を持っていて、一見金などどうでもよいとうそぶいている人間が実は一番カネに意地汚く、他人の財布が気になって仕方がない人間だともいう。

このような人間になるよりは金は人間にとって必要なものであることをしっかり認識し、まっとうな方法で財を成すことこそが追求されるべきであるというのが氏の哲学である。

ところで蓄財は一部の利に聡い人間やコネのある人間や生まれつき財を既に持っている人間だけができることであろうか?

そうではない。実際に本業に邁進し、仕事の中に楽しみを見出し、仕事を行うことが苦痛ではなく、楽しくて楽しくて仕方がないという状況になったとき、財を成すために最低限必要なしっかりした「芯」が生まれる。

この「芯」を作るまで毎日耐えることができた人間は必ずこの芯を雪だるまのように膨れ上がらせることができると本多氏は信じている。

どうやってその「芯」から更に財を膨らませるかの詳細を書いてしまうと面白くないので、ぜひ本多氏の著作を手にとって欲しいと思うのだが、まさに毎日規則的に、しかし普通の人よりは、多少大目に時間を割いて、平凡でつまらないような単純な作業を知的に情を持って繰り返すことでその財は膨らんでいく。

本書のさらに面白いところはこれが氏が80歳になってから書かれているもので、氏がこれまで体験してきた、金という鏡を通じて映し出した様々な人間模様を「私の体験社会学」としてまとめているところだ。

特に上述したような、金を持つことに対する妬みは非常に強く、時にそれがありえない逆恨みとなるということを、寄付を求められてそれに応じなかったために殺された安田善次郎(安田財閥を築いた)の例を挙げて説く。金を持つものは金を生んだり使ったりする「理」で動くだけでなく、「情」も持ち合わせ、自分だけでなく、関わってくる全ての人と利を共に築いていかなければならない、と説いている。このあたりは、政府から様々な大規模山林事業の監督を任された本多氏が、何かを成し遂げるには一人だけの力では無理で、自分が仕事を楽しむと同様、一緒に働いてくれる人間も仕事を楽しみ、共に財を成してくれなければ、大規模な事業が継続するのは無理であるという考えが基にある。

まじめに、こつこつを否定することなく、常識的な方法で途方もない財を成す。なんの面白みもないかもしれないが、世の98%の人たちが活用できる素晴らしい蓄財術を説いた一冊。

■■
今日の書評はいかがでしたか。

本書は、投票欄では『人生と財産』となっています。『人生と財産』は本書と他の本多氏の著作数冊をまとめたもので、現在廃刊となっており、中古は高額なものになっています。他の書と切り離した本書は新刊として出されており、お求め安くなっています。

投票は、『人生と財産』でお願いします。

投票はブログページの左側の投票欄を使ってください。もしブログページから投票しづらければ、以下からもできます。

http://vote1.fc2.com/poll.php?mode=result&uid=13737516&no=3

投票は一時間待つと何度でもできますので、よろしくお願いします。

■■
「読もうよ!日本書」街での読書会の予定

次回は6月上旬に都内で行う予定です。ぜひご参加ください。


■■フリーペーパー発行予定

会ではフリーペーパーを発行する予定です。また「母から娘へ伝えたいレシピ」という題でコラムを書いてくれる料理人の方を探しています。ご興味のある方は会までご連絡ください。

■■
こちらもぜひお読みください!第二回投票候補として紹介している他の日本書の書評です。投票もお願いします。


盛田昭夫・下村満子・E.M.ゴールドマンの『Made in Japanわが体験的国際戦略』
http://nihonsho.seesaa.net/article/270299664.html

新田次郎『八甲田山死の彷徨』
http://nihonsho.seesaa.net/article/269293328.html

中部銀次郎「ゴルフの神髄新編もっと深く、もっと楽しく」
http://nihonsho.seesaa.net/article/268206428.html

所功『日本の祝祭日「国民の祝日」の来歴を解き明かす』
http://nihonsho.seesaa.net/article/266876836.html

小出義雄 『君ならできる』
http://nihonsho.seesaa.net/article/265410255.html

輿津要(編)『古典落語』
http://nihonsho.seesaa.net/article/263833722.html

星新一『人民は弱し 官吏は強し』
http://nihonsho.seesaa.net/article/262282138.html




posted by 日本書を選定して読みあう会 at 00:16| Comment(1) | 日本書候補書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
凄い人ですね〜
Posted by 本多静六の投資術 at 2012年09月07日 04:31
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。